今回は、「子どもが虫とりをするときに親が気をつけたいこと」をテーマに、虫が好きな子どもがいるご家庭は知っておくべき、虫とりの禁止事項や注意点をわかりやすく解説します。
我が家には虫が大好きな息子(5歳)がいます。
2歳頃から虫にハマり、5歳の今までずっと飽きずに虫とりを楽しんできました。
動物園に行っても、遊園地に出かけても、ショッピングセンターの入口まで歩いている間にも、ちょっとした植え込みを見つけるたびに虫をさがしている息子。
そんな息子の様子を見て「そこまで好きなら、思いきり虫とりをさせてあげたい」と思ってしまうのが親心です。
「いつもの公園のほかに、もっといいところはないかなぁ?」と虫とりスポットを探してみると、全国に「虫とり禁止」の場所が数多く存在することに気がつきました。
とくに、自然が豊かな場所であればあるほど、街中で出会えないような珍しい昆虫と遭遇できる確率が上がりますが、そのような場所はそこに住む生きものを守るための法律や条例が厳しく定められていることが多いのです。
今回は、このような生きものの保護を目的とした法律や条例の内容にも触れながら、
- 小さい子どもの虫とりで気をつけることは?
- 虫をとってはダメな場所はどんなところ?
- とったりさわったりしてはいけない虫はいるの?
- 子どもの虫とりが目的のお出かけで注意すること
というような、子どもの虫とりで親が気をつけたいことについてお話します。
虫をはじめとした生きものについての法律や条令は数多くあり、すべてを紹介しているとかなりのボリュームの記事になってしまいます。
当サイトでは、虫好きの子どもがいるご家庭へ向けた情報を発信していますので、子どもを虫とりに連れて行く保護者の方にとってあまり関係がないようなところは省きました。
虫とりをあまりしてこなかった方でもわかるように解説したいと思いますので、ぜひ最後まで読んでみてくださいね。
参考になればうれしいです
小さい子どもが虫とりをするときに気をつけることは?
小さな子どもが虫とりをするときには、他人の迷惑にならないことと、子ども自身と周囲の安全に気をつけることが大切です。
普段の虫とりでは、とくにこの5点を注意するとよいかと思います。
- 広くて安全な場所で虫とりをする
- 他人の敷地内(田んぼや畑など)に入らないようにする
- 虫とり網を人にぶつけないように注意する
- 危険な虫(蜂、毛虫、マダニ、サシガメなど)に気をつける
- 熱中症にならないようにする
小さな子どもは視野がせまいため、まわりの危険に気づきにくく、転んだりぶつかったりしやすいです。
実際に、息子は虫を追いかけているとき、「普段よりまわりが見えていないんじゃないか?」と感じることが多々あります。
他人の迷惑になっていないか、危険がないかを保護者である私たちが常に気にかけることが大切です。
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法律や条例で決められている虫とりのルールについて
これまでは「虫とりをしているとき」のお話でしたが、虫をとる前に確認しておきたいことがあります。
それは、「虫をとってもよい場所かどうか」ということです。
日本各地には、法律や条例で指定されている「虫をとってはダメな場所」が存在します。
もし、その場所で虫をとってしまったら、法律や条例違反となり、罰則が科されます。
また、虫をとってもよい場所であっても「とってはダメな虫」というものも存在します。
もし、「とってはダメな虫」をとってしまったら、やはり法律や条例違反となり、たとえ知らなかったとしても罰則が科されてしまいます。
ここでは、法律や条例で定められている
- 虫とり禁止の場所
- とったりさわったりしてはいけない虫
について、子どもがいる家庭が知っておくべきルールを、ポイントをしぼってお話ししたいと思います。
虫とり禁止の場所はどんなところ?
虫とりをしてはいけない場所は、国の法律や各都道府県・市町村の条例で細かく定められています。
ひとつひとつ解説をすると、かなりのボリュームになるため、ここではギュッと内容をしぼりこんでお話ししたいと思います。
突然ですが、みなさんに質問です。
あるところに、虫が好きな子どもがいたとします。
その子は東京に住んでいるため、近くにたくさん公園もあるけれど、いつも同じような虫しか出会いません。
「もっといろんな虫がいるところで虫とりしたい」と、お父さんやお母さんに訴えたとします。
さて、お父さん、お母さんは子どもをどこにつれていってあげますか?
山に囲まれているような大きな公園でもいいですし、普段見ることができない虫に出会えるような場所に旅行に行ってもいいかもしれません。
しかし、このときに注意しなければならないことがあります。
それは、「虫とりをしてはいけない場所があることを念頭におきながら、場所探しをしなければいけない」いうことです。
特に注意するべき場所は、「自然が豊かなところ」と「国立・国定公園」です。
候補に挙げた場所がこの2つに当てはまる場合は、一度立ち止まってみましょう。
自然が豊かなところ
人の手が加えられていないような自然が残されている場所や、そこでしか見られない植物や生きものがいることで知られている場所は、まず虫とりは禁止されていると考えていいです。
自然が豊かなところは、その豊かな自然(動植物)や生態系を保護するなどの目的で、採集についてのルールが細かく決められています。
そのルールを決めているのは、国であったり、都道府県であったり、市町村であったりします。
「誰(国や自治体)」が「どこ」を「どのようなルール」にしているかはわかりにくいですし、知りたい情報が書いてあるところもバラバラだったりするのですが、その場所の公式HP(公園の場合はHPの利用案内など)や国・自治体のHPを見れば、だいたいの疑問は解決するかと思います。
ルールを調べるのは少しめんどうかもしれませんが、「知らなかったせいでルール違反をしてしまった」というトラブルを防ぐためにもルールはしっかりと確認しましょう。
私はいつもインターネットで「場所の名前 昆虫採集」と検索して、情報収集をしています
国立・国定公園
国立公園や国定公園は虫とりが禁止されている場合が多いです。
もう少し細かく言うと、国立・国定公園内に指定されている「特別保護地区」は虫とりが禁止、「特別地域」は注意が必要です。
「自然公園法」という法律により、国立・国定公園内はエリアにわけて管理されています。
「特別保護地区」はもっとも自然が保護されているエリアのため虫とりは禁止であり、「特別地域」では「この種類の虫はとらないでくださいね」と採集禁止の虫が決められている場合があります。
国立・国定公園のHPを見ると、利用案内に「虫とりあみ・虫かごは持ち込み禁止」「昆虫採集禁止」などと明記されている場合が多いです。
お出かけ前に公園公式HPをしっかり確認することをオススメします。
とったりさわったりしてはダメな虫がいる
絶滅しそうな動植物や生態系を保護するなどの目的で、動植物の採集ルールについても、国の法律や自治体の条例で細かく定められています。
「採集ルール」とひとことでいっても、そのルールはさまざまです。
日本には採集禁止の虫が数多く存在しますが、「全国どこでもとってはダメです」というようなトップクラスで保護されている虫もいれば、「Aの場所ではとってもOKだけどBの場所ではとらないでください」というような虫もいて、とてもややこしいです。
さらに「さわるだけでもダメです」というような虫まで出てくると、私のように「もうなにがなんだか」状態になるお母さんも多いのではないでしょうか?
ここでは、「とったりさわったりしてはダメな虫」について、わかりやすく解説したいと思います。
キーワードは「レアな虫」
「とってはダメな虫」とは天然記念物や国内希少野生動植物種などに指定されている虫です。
・・・と「天然記念物」や「国内希少野生動植物種」などを順に紹介していくと、かなり長くなりそうです。
なので、ここではこれらについてくわしく説明することは省こうと思います。
さまざま法律や条例によって「採集禁止種」は決められているのですが、この「採集禁止種」には共通点があります。
それは、
- 日本のごく一部の地域(または、その地方でかぎられたエリアのみ)でしか生息していないような虫
- 絶滅のおそれがある虫
のいずれかの条件、もしくは両方に当てはまっているという点です。
ようするに、採集禁止種=“レアな虫”であり、レアな虫を見つけときはつかまえたくなる衝動をおさえて「採集禁止種のルール」を確認する必要があります。
とくに、「ヤンバルテナガコガネ」のような天然記念物に指定されている“超レアな虫”の場合、生きていても、死んでいても、さわるだけで違法になる可能性があります。
国の天然記念物を許可なく採集した場合は文化財保護法違反となり、「5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金」というのですから、採集ルールを確認しないで虫とりをすることは危険な行為です。
場所が変わればルールも変わる
ヤンバルテナガコガネほどの、めったに出会うことがない虫であれば「もしかしたら採集禁止種かな?」と気づくかもしれませんが、これが「ミンミンゼミ」だったらどうでしょうか?
ミンミンゼミは関東ではめずらしくもなんともないセミですが、屈斜路湖のある北海道川上郡弟子屈町に位置する和琴半島では天然記念物に指定されていて採集が禁止です。
ミンミンゼミように、ある地域では子どもの昆虫採集の定番の虫であっても、ある地域では保護されていて、採集禁止になっている虫というものも存在するのです。
採集禁止の虫については、インターネットで検索して調べましょう。
「虫とり禁止の場所」と同様に、その場所の公式HPや国・自治体のHPに掲載されていたりしますので、確認してみましょう。
[補足]特定外来生物は持ち帰ってはダメ
もともと、ほかの地域に住んでいたものの、人為的にその地域に入りこんでしまった生物を「外来生物」とよびます。
外来生物のなかでも、とくに生態系などへの被害がある種は「特定外来生物」に指定されています。
特定外来生物を「つかまえること」は違反にはならないのですが、生きたまま移動させたり(ほかの場所で放すことはNG)、持ち帰って飼育することは禁止されています。
夏になると、私の住む関東では特定外来生物に指定されている「アカボシゴマダラ」という蝶がたくさん飛んでいます。
樹液の出ている木に集まっているところもよく見かけます。
このように、特定外来生物は私たちの身近なところで生息している場合があるため、子どもが虫とりをする場合には注意が必要です。
「特定外来生物にはどんな昆虫がいるのか」を親子で確認しておくと安心です。
親子で生態系について学ぶいい機会にもなりますよ。
環境省のHPに「特定外来生物一覧」が掲載されていますので、親子でチェックしてみてくださいね。
旅先での虫とりルールを理解しよう!~石垣島旅行での体験談~
当HPに来てくださる方のなかには、「図鑑でしか見たことがない虫に、子どもを会わせてあげたい」と自然が豊かな場所への家族旅行を考えているお父さんやお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか?
ここから先は「旅行にいくときは、その場所での虫とりのルールをしっかりと理解することが大切」というお話をさせていただこうと思います。
冒頭でもお話ししたとおり、我が家には昆虫が大好きな息子(5歳)がいます。
図鑑や昆虫採集YouTuberの影響もあってか「石垣島へ行ってみたい」と言うようになり、「図鑑でしか見たことがない虫に出会えたら、息子は喜ぶだろうな」という単純な親の思いから石垣島への旅行を決めました。
「自然が豊かな場所であれば、生きものとのふれあいが簡単にできる」と思ってしまっていたのです。
しかし、それは思い違いでした。
豊かな自然が残されている石垣島には、自然を保護するために私たちが守るべきルールが厳しく細かに定められていています。
それらのルールを子どもにわかりやすく伝えるためにも、親である私たちがルールをしっかりと理解する必要がありましたが、その前に「そもそも石垣島にはどんなルールがあるのか」をひとつひとつ確認していく作業が必要でした。
「自然が豊かな場所であれば、生きものとのふれあいが簡単にできる」は間違いで、「自然が豊かな場所であればあるほど、生きものとふれあうことは困難」だったのです。
石垣島の条例では、自然を守るために「保護地区」や「保全種」が定められています。
虫とり素人の私にとって、HPの情報だけで「保護地区」や「保全種」をはじめとした「石垣島の虫とりルール」を理解することは、少しむずかしく感じました。
そこで、石垣市の環境課に問い合わせをしたところ、「子どもの虫とり程度なら・・・」という前提で、
- 採集禁止の虫は網に入ってしまうとNGなので、見つけた時点で種を特定しなくてはいけないこと
- 採集禁止エリアについてのさらにくわしい情報(石垣市は採集禁止エリアが広範囲に設定されています)
- 公園やエリアによっては管轄(市、県など)が違う。石垣市の管轄ではない場所については、その管轄の部署へ再度問い合わせる必要があること
などの、虫とりをする際の注意事項を教えてくださいました。
もし、HPの情報だけではわからない場合は、管轄先に電話で問い合わせをしてしまっても大丈夫かと思います。
「よくわからない」を放置して、意図せずルール違反をしてしまう方が困りますからね。
とても親切に教えてくださった石垣市の環境課のご担当者さま、ありがとうございました
少しめんどうに感じてしまうかもしれませんが、自然を未来へ残していくために、自分がルール違反をすることがないように、この「虫とりルールを理解するための確認作業」は、虫好きの子どもがいる親は避けては通れないのです。
くり返しになりますが、お出かけ先での「虫とりのルール」をしっかり理解することは、過ちから自分や家族を守るため、自然を守るために非常に大切なことです。
石垣島にかぎった話ではなく、これはどんな場所であってもおなじです。
お出かけ先で子どもが虫とりをしたがっている場合は、HPなどでしっかりと情報収集してから子どもに虫とりをさせてあげてくださいね。
そして、よくわからない虫(種を特定できない虫)はさわらないようにしましょう。
まとめ
今回は、子どもの虫とりで親が気をつけたいことをテーマに、虫が好きな子どもがいるご家庭で知っておくべき注意点についてお話ししました。
子どもが虫とりをする際は、
- 他人の迷惑にならないよう配慮すること
- 安全対策をすること
- 法律や条例を守ること
が大切です。
とくに、法律や条例は複雑ですので、しっかりと調べて理解したうえで、決まりを守って虫とりをしましょう。
子どもとしっかりお約束をしたあとは、楽しく虫とりをしてくださいね。
なお、当記事では『いきもの六法』という本を参考にさせていただきました。
『いきもの六法』には、生きものが好きな人なら知っておくべき内容がたくさん掲載されています。
動植物の採集ルールについてくわしく知りたい方は、ぜひ読んでみてくださいね。
[参考文献]中島慶二・益子知樹(2022)『いきもの六法』山と渓谷社